【評論解説】長い説明の後にキーワードがくるパターン
動画でも取り上げております、以下の文章の読み方を解説していきます。
私たちは、知っていることを増やせば増やすほど、世界を正確に理解できると思いがちである。しかし現実には、情報が増えるほど判断が鈍る場面がある。なぜなら、目の前の出来事には無数の要素が絡み合っており、それらをすべて同じ重さで扱ってしまうと、結局「何が重要なのか」が見えなくなるからだ。そこで必要になるのは、雑多な情報の海から、意思決定に直結する骨格だけを抜き出し、残りをいったん脇に置くという態度である。つまり、判断を可能にするために、重要でないものを意識的に落とし、見通しを作り直す働きこそが、「抽象化」である。
たとえば、学校での話し合いを想像してみよう。文化祭の企画を決める会議では、「去年の反省」「各クラスの希望」「予算」「時間」「安全」「SNS映え」など、意見は際限なく出てくる。ここで、出てきた意見をすべて同列にメモしているだけでは、決定はいつまでも先送りされる。そこで、まず「今年の目的は何か(来場者を増やすのか、参加者の満足なのか)」「制約は何か(予算と時間はどこまで動かせないのか)」という枠組みに整理する。すると、「SNS映え」は目的を達成するための手段の一つに位置づき、「去年の反省」は制約を増やす要因として扱えるようになる。こうして、個々の発言を“目的・制約・手段”という骨組みに置き換えた瞬間、議論は前に進みやすくなる。
あるいは、友人関係のトラブルでも同じだ。誰かの言葉に傷ついたとき、人はその言葉の細部や言い方、周囲の雰囲気まで抱え込み、感情をさらに膨らませてしまう。しかし、「私は何に傷ついたのか」「相手は何を伝えようとしたのか」という要点に戻ると、問題は「意図のすれ違い」や「境界線の確認」といった形で整理できる。細部を捨てるのではなく、細部に飲み込まれないために、必要な構造だけを取り出すのである。
このように、抽象化とは「難しいことを難しく言う技術」ではない。むしろ、複雑な現実をそのまま抱え込んで立ち止まるのではなく、前に進むための見取り図を作る行為である。だからこそ、抽象化とは、状況の細部をいったん落として、判断に必要な骨格だけを取り出すことである。
【設問】
太文字部「抽象化とは、状況の細部をいったん落として、判断に必要な骨格だけを取り出すことである。」とはどういうことか。本文の内容に即して説明しなさい。
第1段落は、最初の3行で「情報の整理に関する現状」の説明。後半で必要な事項を挙げています。
その作業の内容を説明する文章の末尾に、「抽象化」という言葉を述べている。

ここまで文章を割いて述べた事項は、キーワード(本文のメインテーマになり得る言葉)としてチェックするべきでしょう。
「必要になる」という表現からも、「抽象化」がキーワードとなることは予想できます。
第2段落は、冒頭に「たとえば」とあり、例が展開されることが分かります。
少し意識して欲しいのは、「何の話に対する具体例か」ということです。
具体例に対応した抽象部分を意識することは、話のスムーズな理解において重要です。

このように、第1段落と第2段落で、意味合いが似ている部分を同じ色でチェックしました。
すると、「意見が複数出てくる状況(青色)を、整理する(赤色)ことでうまく意思決定ができる」という構成であることが分かります。
よって、第2段落は、「抽象化」を実践した例だと分かります。
ちなみに、この「抽象化」という作業に対して、筆者は肯定的に捉えていることが考えられます。
「議論は前に進みやすくなる」という表現などから推理すると良いでしょう。
第3段落は、「あるいは〜同じだ。」という1文目から、また具体例であることが予想できます。
実際、以下の通り第2段落とほとんど同じ構造で話が展開されています。

第4段落は、抽象化の特徴をまとめています。
「〜ではなく、むしろ・・・」という構成となっているため、肯定文である後半を重視して読むと理解しやすいです。

以上が本文の簡単な整理です。
・キーワードが抽象化であること
・抽象化が必要な場面や背景
・抽象化の役割
こういった要素を理解しておけば、設問にも対応しやすくなります。
今回の設問は、太線部の説明です。
「どういうことか」という問いは、基本的に言い換え表現を探して対応します。
「抽象化とは〜ことである」という表現と近い表現を振り返りましょう。
注意点は、具体例をそのまま用いないことです。
抽象化という作業の説明を述べることが求められているのに、「友人関係のトラブル」などで状況を限定することは正解から遠ざかります。
具体例がどんな場合であれ、当てはまる説明が望ましいです。
以下のような要素が良いでしょう。
・雑多な/複雑な情報の中から
・意思決定に直結する骨格/要点だけを抜き出し
・残り(の細部)/重要でないもの を 一度脇に置いておく/考慮から外す/保留する
・見通しを作り直す/前に進むための見取り図を作る働き
具体例が述べられた段落からも、抽象的に適用できる表現は見られます。
そういう時は、回答に利用してもOKです。
基本的に本文の表現をそのまま使うことが無難ですが、比喩的・詩的な表現は避ける方が客観的な説明としては良いでしょう。
(今回だと、雑多な情報の「海」など。)
【解答例】
抽象化とは、雑多な情報の中から、重要でないものを考慮から外しておいて、意思決定に直結する要点だけを抜き出して見通しを作り直す働きであるということ。
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